離縁を告げた夜、堅物御曹司の不器用な恋情が激愛豹変する

「――あ。やっぱり真木さんと悠花さん来てた~!」

 明るい声を上げてオフィスに入ってきたのは、葵ちゃんだった。混乱冷めやらない中ではあったけれど、なんとか葵ちゃんに微笑みかける。

「やっぱりって……?」
「だってあんなメッセージ受け取ったら、後から〝やっぱり来なくていい〟って言われたって気になっちゃうじゃないですか。責任感の強いおふたりもそうかなって思って来てみたら、予想通りいるんですもん。で、どこまで話進んでます?」

 てきぱきとパソコンの準備をしながら、葵ちゃんが私たちの顔を交互に見る。

 やっぱり来なくていい? そんなメッセージ、私は受け取っていない。

 一体どういうこと……?

 ますます混乱し、思わず真木さんの顔を見る。彼は少しの間沈黙していたけれど、やげて髪をかき上げ、いつもの人懐っこい微笑みを浮かべた。

「よし、三人いればなんとかなるだろう。ちなみに俺たちも今来たところだから、まだ何も進んでない」
「了解です。ちゃっちゃとやっちゃいましょう!」

 葵ちゃんが加わったことで、オフィスは昼間と変わらない平和な空気を取り戻す。

 さっきの真木さんに感じた不穏な気配は、私の思い過ごしだった……のかな。

 
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