離縁を告げた夜、堅物御曹司の不器用な恋情が激愛豹変する
再構築への一歩――side珀人
深夜、俺は運転代行サービスで自宅へ帰ってきた。最愛の妻からの決別宣言の後、ひとり何食わぬ顔でスイートルームに宿泊できるほどの精神力は持ち合わせていなかったのだ。
正直、今回のデートに賭けている想いが大きすぎたため、あのような結末を迎えてしまったという現実をまだ受け止めきれていない。
重い足取りで玄関のドアを開け、室内に上がろうとしたところでふと足元の靴に気づく。今日、悠花が履いていたブーツだ。
俺の顔を見たくないからと今夜は帰ってこない可能性もあるとうっすら考えていたため、わずかながらホッとする。心配していた真木の餌食にもならなかったようだ。
彼らはあくまでビジネス上の関係なのだから、嫉妬する俺の方がおかしいのかもしれない。
今さら後悔しても遅いが、どうして悠花を信じて送り出してやれなかったのだろう……。
重い足取りで廊下を歩き、寝室を覗く。ベッドの上にはすでに休んでいるらしい彼女の姿があった。
起こさないように足音を殺して部屋に入り、コートを脱いでクローゼットにしまう。
俺はそれから彼女に教えられた棚の引き出しを開き、確かに離婚届が用意されているのを確認した。
……悠花は本気なのだ。