離縁を告げた夜、堅物御曹司の不器用な恋情が激愛豹変する

 仕事を初めて一時間ほど経ったところで、ふと悠花の様子が気になった。

 よく眠っているだけかもしれないが、長い時間トイレに立つ気配もないし、そろそろ空腹も感じる頃ではないだろうか。

 なにか作ろうかとも思ったが、俺の作った料理などいらないと言われる可能性もある。

 とりあえず本人の意思を聞くのが無難か……。

 昨日の気まずさを引きずってはいるものの、このままコミュニケーションを取らないままではいられない。ひと晩顔を見ていないから、なんとなく彼女が心配でもあった。

 寝室の前まで行き、ドアをノックする。

「はい」

 かすかだが、悠花の返事があった。どうやら目を覚ましてはいるようだ。

 あんな風に別れてから初めて会話を交わすので、少しの緊張を抱きながら「入るぞ」と声をかける。

 ベッドに近づいていくと、それまで背中を向けていた悠花が、こちら側に寝返りを打った。

 その顔を見て、俺はすぐに異変に気づく。

「……体調が悪いのか? 真っ青だぞ」
「はい。頭が痛いのと、体がだるくて……」

 思わずスッと手を伸ばし、彼女の額に触れる。熱でもあるのかと思ったが、俺とあまり変わらない体温だ。

「熱はないようだが、その様子ではこれから上がるかもしれないな」
「すみません。……あの」
「体調不良は謝るようなことじゃない。疲れがたまっていたんだろう。なにか欲しいものはあるか? 家にないものならすぐに買って来る」

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