離縁を告げた夜、堅物御曹司の不器用な恋情が激愛豹変する
悠花は水だけを少量口にした後、「少し寝ます」と言って目を閉じた。俺は何度か様子を見に行ったが、彼女はよく眠っていた。
眠れないよりはいいが、やっぱり少しはなにか食べた方がいいのではないかと、リビングダイニングに戻った俺はスマホでお粥のレシピを検索する。
今の彼女には少しの味付けも負担になる気がしたため、米と水にほんの少しの塩だけを加えるだけのシンプルな白がゆだ。
基本の作り方に忠実に丁寧に作ることを意識して一時間以上もかかってしまったが、きちんとそれらしいものが完成した。
鍋から茶碗に一杯よそったものをお盆に載せ、レンゲを添えて寝室の悠花のもとへ持っていく。
すると、彼女はちょうどベッドからゆっくり上半身を起こしたところだった。
先ほどよりは多少顔色もいい。
「悠花、具合はどうだ?」
「おかげさまで少し、楽になりました。それは……?」
「ああ、お粥を作ってきた。食べられそうか?」
「作った……? 珀人さんがですか?」
悠花が目を丸くする。
「……そういえば、きみのために料理をするなんて初めてかもしれないな」
自嘲気味に言って、ベッドサイドのテーブルにお粥のお盆を置く。
本当に……これまでもそうするチャンスはあったはずなのに、俺は自分の意思で棒に振ってきた。本当に、馬鹿な男だった。