離縁を告げた夜、堅物御曹司の不器用な恋情が激愛豹変する
「それは悠花が悪いわけじゃない。むしろ、きみの気持ちを不安定にさせた元凶は俺だ。怒りも憎しみもぶつけたかったらぶつけていいし、こうして甘えてくれるのはもちろん大歓迎だ。きみのどんな感情も、ありのまま受け止めて愛したいと思っているから」
「珀人さん……」
顔を上げた彼女と、視線が絡み合う。俺は彼女の頬を両手で包み込み、そっと唇を合わせた。悠花は頬を赤く染め、恥じらうように俯く。
その愛らしい反応に心を掴まれこのまま押し倒してしまいたい衝動に駆られるが、彼女は病人。
まして、俺との関係に真剣に悩んでいるこのタイミングで強引に迫るのは、卑怯な気がする。しかし……。
「これ以上俺のそばにいると危険かもしれない」
「えっ?」
「昨夜からずっとおあずけの状態が続いているからな。きみがこうして触れられる距離にいると……どうしても抱きたくなる」
素直に胸の内をさらけ出した俺に、悠花は瞳を潤ませて困った顔をする。見ているだけで、体の中心が熱くなっていく。
必死で抑え込んでいる欲情が、溢れてしまいそうだ。
「わ、私……寝室に戻ります」
パッと俺から目を逸らした悠花が、逃げるようにソファを降りる。
「……ああ、正しい判断だと思う。ゆっくり休んで」
「は、はい。……あの、明日なんですが」
「明日?」
「これくらいの体調であれば、会社へは行くつもりです。やらなければいけないこともあるので……」