離縁を告げた夜、堅物御曹司の不器用な恋情が激愛豹変する
前向きに変わりつつあった俺の胸中とは裏腹に、悠花はその日以降も、体調の悪い日が続いていた。
翌日こそ会社へ行ったが、結局その週に出勤できたのは月曜日と水曜日の二日間だけ。
悠花は疲れているだけと言って医者へ行くことを拒んでいたが、木曜日の朝ベッドから起き上がれない彼女がさすがに心配で、俺は自分も会社を休むことに決める。
そして、実家にいた頃から付き合いのある神山先生という医師に、自宅まで往診に来てもらった。
先生たちを寝室へ案内し、悠花の様子を診てもらう。
「なるほど。顔色がよくないですな」
悠花の顔を注意深く見ていた先生が、深刻そうな表情で俺に告げる。
「ここ数日、ずっとこんな感じでして……熱はありませんが、とにかく食欲がないんです。水を飲むのもつらそうで」
本人に代わって症状を説明していると、悠花がベッドの中から手を伸ばし、俺のシャツをキュッと掴んだ。
「……珀人さん」
ほとんど吐息ばかりの、弱々しい声。代われるものなら代わってやりたいと思いながら、身を屈めて彼女の手を握り返す。
「どうした?」
「少し、部屋の外で待っていてくださいませんか? 先生にお話したいことがあって」
……俺には聞かれたくない話なのか?
胸に引っかかるものを感じ、声に出さずにそう思う。
しかし、こんなに苦しんでいる悠花を問い詰めることなどできない。