離縁を告げた夜、堅物御曹司の不器用な恋情が激愛豹変する

 悪い方向へと考え出すと歯止めがきかず、居てもたってもいられずに寝室へと戻る。

 悠花は顔だけをこちらに向けて、ゆっくりと瞬きをした。

「早いですね……。先生のお見送りはよかったんですか?」
「ああ。申し出たんだが、先生がきみのそばにいてやってくれと。悠花、きみはまさか命にかかわる悪い病気なのか? だから先生もあんな言い方を……」

 俺はたまらずベッドの傍らに膝をつき、布団の上に出ていた悠花の手を握りしめる。そして、彼女の体温を確認するように、自分の頬にあてた。

 このぬくもりが失われるようなことなどあるとは思いたくないが、今はとにかく事実を知りたい。

 悠花がどんな病気であろうと、夫として支えていく覚悟はある。

「教えてくれ、悠花。……きみの体になにが起きている?」
「珀人さん……」

 悠花はなにか考えるように長い睫毛を伏せ、しばらく口ごもる。しかし、もう一度俺をその目に映した時には、覚悟を決めたように凛としていた。

「私、あなたの赤ちゃんを身籠っているかもしれません」

 悠花の声はきちんと聞こえていたのに、俺はしばらく言葉の意味を理解できずに固まっていた。

 赤ちゃん……妊娠した、ということか?

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