離縁を告げた夜、堅物御曹司の不器用な恋情が激愛豹変する
予想通り、その日の夜は私が眠るまでの間に彼が帰宅せず、顔を見ることができたのは翌朝だった。
お互いに仕事へ行く準備をするのでゆっくり話している暇はなかったが、先に出かける彼を玄関で見送る時に、言葉をかけた。
「珀人さん、明日は何時頃出張からお帰りですか?」
「そうだな……。三時頃の新幹線だったから、家に着くのは五時前後になると思う。なにか心配事があるのか?」
「いえ。ただ、珀人さんが帰ってきたら、お話ししたいことがあるんです」
「気になるな……。今じゃダメなのか?」
「長くなりそうなので、お帰りになってからちゃんと話します。そろそろ行ってください。遅れたら鞠絵さんに怒られちゃいますよ」
私から話を聞き出すまで会社へ行かないような雰囲気の彼を、急かすつもりで言う。
ところが、珀人さんは困ったように苦笑した。
「……四季はもう、俺の秘書ではない。怒られるなら新しい秘書にだな」
「えっ?」
鞠絵さんが秘書じゃない……?
昨日私の会社に来た時の彼女は、ひと言もそんなことは言っていなかったのに
「ああ。やはり、同級生の秘書というのはやりづらい部分もあったんだろう。業務に集中できていない様子が見られたから、今週から配置換えをしたんだ」
「そうだったんですか……」