離縁を告げた夜、堅物御曹司の不器用な恋情が激愛豹変する
気分が優れないまま、どれくらい時間が経った頃だろう。リビングダイニングの方から、門の外につけられたチャイムが鳴らされている音が聞こえてきた。
しかし、今は応対できる状況ではない。普段なら会社に行っている時間なので、居留守を使っても問題ないだろうと判断し、ベッドにとどまる。
すると、来訪者が二度目のチャイムを鳴らした。一度目よりは罪悪感を覚えつつも、布団をかぶって目を閉じる。
それでやり過ごせると思っていたのに、続けて三度目が鳴らされた。まるで、私が家にいることを知っているみたいに。
「誰……?」
その条件に該当するのは真木さんぐらいだが、彼ならスマホに連絡することもできるから、なんとなく違う気がする。
ゆらりと体を起こした私は、リビングダイニングに移動すると、壁に取り付けられたインターホンモニターを確認した。
カメラの前に立っているのはひとりの女性だ。小さなモニター越しにでもその美貌がわかる、珀人さんの元秘書。
「鞠絵さん……?」
知り合いだとわかってしまうとこれ以上居留守を使っているのが心苦しくなった。私は慌ててマイクをオンにする。
「はい」
『突然お伺いしてすみません、四季です。財前社長に頼まれて参りました』
……珀人さんに頼まれた? いったい、なにをだろう。彼女はもう、社長秘書ではないと聞いているのに。
腑に落ちない点もあるけれど、彼女が財前ホールディングスの社員であることは事実。珀人さんの仕事に関わる大切な用件かもしれないので、私は話を聞くことにした。