離縁を告げた夜、堅物御曹司の不器用な恋情が激愛豹変する
「そうだね。新しい上司のおかげで無事に新作もリリースできたし」
真木さんと入れ替わりでやってきた三十代の男性上司・芦沢課長が厳しい顔で企画書を突き返す姿を眺めながら、葵ちゃんに同意する。
芦沢さんは格闘技選手のごとくガタイがよいい上に強面で、迫力のあるガラガラ声。その表面的な印象から怖がっている社員も多い。
しかし、真木さんみたいな八方美人ではなくダメなものはダメと言うタイプなので、一度痛い目を見ている私や葵ちゃんにはとても好感が高い。
さらに、芦沢さんは真木さんが担当していたせいで空中分解していたいくつかの企画を復活させ、的確なアドバイスでブラッシュアップさせたうえで、順次リリースにこぎつけている。
「私の組んだ完璧なプログラムを無駄にするとかマジで許せなかったので、アッシーさんが来てホントによかったです。ちょっと口は悪めですけど――」
「上司に変なあだ名をつけるような奴に言われたくない」
葵ちゃんの背後にぬっと現れたのは、先ほどまで別の社員にお説教していた芦沢さんだった。葵ちゃんが少し気まずそうな顔になる。
「あ、アッシー……じゃなくて、芦沢課長……」
彼は持っていた書類をぺしっと葵ちゃんにつきつけ、不愛想に彼女を見つめる。