離縁を告げた夜、堅物御曹司の不器用な恋情が激愛豹変する
「きみの作ったこのシステム、汎用性が高そうだから他のチームにも共有したいんだが、構わないか?」
「えっ。やっぱよかったですよね! 自分でも美しいコーディングだと思ってたんです!」
「共有していいかと聞いている」
「もちろんですよ! すぐやりまーす」
葵ちゃんは軽やかに自分の席に戻り、楽しげにパソコンを覗くと、キーボードを叩き始める。
珀人さんが見たら、『やっぱり餅は餅屋だな』って言いそう。そんなことを思いついて、つい口元が緩む。最近知った彼の口癖なのだ。
「財前、この企画書で直してほしいところがある。改善案としては――」
葵ちゃんを焚きつけたかと思うと、今度は私に別の書類を渡し、的確な弱点を突いてくる芦沢さん。
私が親会社社長の夫人であるとか、妊娠しているとか、そういう立場は一切関係なく接してくれる。そんなところもありがたかった。
「わかりました。すぐに修正しますね」
信頼できる上司のおかげで仕事へのモチベーションは上がる一方。プライベートでは珀人さんに溺愛される毎日で、私は充実感に溢れていた。