離縁を告げた夜、堅物御曹司の不器用な恋情が激愛豹変する

「最後にかけ湯をしたら、タオルで包んであげましょう。擦らないように、でもしっかりと押さえ拭きで水分を取ってね」

 赤ちゃんの体をふいて、オムツと肌着、服を着せてやる。そこでも俺は肌着の紐を結ぶのに人一倍苦労して、ようやくすべての工程を終えた時にはどっと疲れていた。

「お疲れ様です、珀人さん」

 今度は別の夫婦が指導を受け始める中、俺たちは自分たちの席へと戻る。俺はハンカチで額の汗を拭い、悠花に正直な感想を漏らした。

「いや、本当に……今まで使ったことのない神経がくたくただ」
「子育て、不安になっちゃいましたか?」
「ああまで自分が不甲斐ないと知って、少しな。でも、自分の子どものことだ。出産まで何度もイメージトレーニングを重ねて、沐浴もオムツ変えも、ミルクをあげるのだってマスターしてみせるさ」
「ふふっ。楽しみにしてます」

 両親学級ではその他にも、妻が陣痛を迎えた時に夫ができるマッサージ、出産のときの呼吸法、入院時の持ち物や注意点について、配られた冊子に沿って細かく教えてくれる。

 俺は立ち合い出産を希望しているので分娩室に入るときの注意も聞いたが、男性の中には出産による出血を見て失神してしまうタイプも多いらしく、そうならないよう心の準備をしておくようにと、きつめに釘を刺された。

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