離縁を告げた夜、堅物御曹司の不器用な恋情が激愛豹変する
参加している夫婦の中には笑っている人たちもいたが、俺はショックを受けていた。
自分の妻が出産によってそれほど体にダメージを受けるという事実を、わかっているようでわかっていなかったのだ。
帰りの車の中でもなんとなく浮かない気持ちで、ハンドルを握りながら悠花に話しかける。
「出産を代わってやれるものならやりたいが……それだけは不可能だからな」
「そのお気持ちだけで心強いです。自分は男だからなにもできないなんて思わないでくださいね。珀人さんがそばにいて励ましてくれるだけで、私はきっと頑張れますから」
悠花だって出産は初めてのことなのに、そうとは感じさせない朗らかさで俺の心を軽くしてくれる。
彼女はいつだってそうだった。高校時代に生徒会選挙で不正を疑われた時も、悠花だけが最後まで俺を信じ、前を向かせてくれた。
あの頃と変わらない芯の通った心の清らかさに、俺は今でも恋をし続けている。
「好きだよ、悠花」
心で想うだけでは抑えきれない、正直な気持ちを口にする。
どれほど愛の言葉を口にしても、毎日数えきれないほどキスをしても、悠花は決して逃げて行かない。
今の俺にはそれがわかっているから、伝えたいと思った時、すぐそうすることに決めているのだ。