離縁を告げた夜、堅物御曹司の不器用な恋情が激愛豹変する
「急にどうしたんですか?」
「急じゃない。二十四時間、三百六十五日、俺はきみを愛している」
「……珀人さん。私も」
車内で愛を告白し合った直後、車が信号に引っかかる。
なにげなく悠花と目を合わせたら、悪戯っぽく微笑んだ彼女がこちらに身を乗り出してきて、俺の頬にチュッと口づけした。
すぐに体を戻した彼女は、自分から仕掛けておきながら、俯いて耳まで真っ赤にしている。
……かわいすぎるだろう。
「帰ったら、お返ししないとな」
「えっ?」
「きみは今のキスで足りたのか? ……悪いが、俺はまったく満足してない」
ため息交じりに言うと、青になった信号に従って車を発進させる。帰宅した後でかわいい妻をどうやって甘やかすか、そればかりを考えながら。
悠花は産休まで無事に仕事をまっとうし、勤務最終日には同じ部署の仲間たちから花やプレゼントをもらってきた。
以前から同じ案件に携わってきたチームメンバーだけでなく、真木に代わって課長となった人物がとても頼れる人物だそうで、自分が休んでいる間のことも、それほど心配はいらないのだとか。