離縁を告げた夜、堅物御曹司の不器用な恋情が激愛豹変する
悠花を労いたくて彼女より早くに帰宅していた俺は早々と夕食の準備を済ませ、悠花が帰宅した時間に合わせて夫婦でささやかなディナーを楽しんだ。
「その新しい上司と葵ちゃんが最近怪しいんですよね……」
「葵ちゃんって、プログラマーの後輩か。怪しいとはまさか真木のように不倫を……」
「いえいえ、ふたりとも独身ですし、普通に恋が始まりそうって意味です。いつも喧嘩ばっかりしてるんですけど、ふたりとも言い合うのがなんだか楽しそうで」
「そういうことか。言いたいことを言い合える関係なら安心だな」
「さすが、実感こもってますね」
「……あまり夫を虐めるなよ」
わざと情けない顔をして見せると、悠花がクスクス笑う。
それから「あ」という顔をしたと思ったら、ずいぶん大きく成長したお腹に両手を当てた。
「赤ちゃん、今けっこう動いてます」
「本当か?」
悠花のお腹に手を当てて胎動を感じることが、最近の楽しみになりつつあった。
胎動を感じるようになってすぐの頃はささやかだったその動きが、今では悠花のお腹の形を変形させるほどに激しくなっている。