離縁を告げた夜、堅物御曹司の不器用な恋情が激愛豹変する
夕食を中断し、悠花のそばに跪いて大きいお腹に手を当てる。赤ん坊はしばらくじっとしていたが、やがて大きく悠花のお腹を歪ませて動くのを、手のひらで感じる。
悠花も自分の感覚でわかったのだろう。俺と目を見合わせて、うれしそうに微笑む。
「すごく元気そう」
「ああ。俺たちの声が聞こえて嬉しいのかもしれない」
我が子の誕生を待ち遠しく思うこの高揚感は、悠花との結婚生活で感じる甘い幸福感ともまた違って、生まれて初めて感じるものだった。
俺自身は一般的な温かい家庭とは少し違う環境で育ったが、我が子のことは、愛の溢れる家庭で大切に育てたい。
悠花とならそれができると確信していた。
「よかったじゃないか、財前。モラハラ夫から脱却できて」
せっかく悠花との幸せな生活を話して聞かせていたのに、そう言って俺を茶化すのは友人の瀬戸山だ。
平日の昼間、俺たちは以前食事をした時と同じ寿司屋の個室に来ていた。
前回は俺と悠花が離婚の危機にあると知った彼が励ましの意味で会計を持ってくれたが、今回はこれまでの感謝の意味も込め、俺の奢りだ。