離縁を告げた夜、堅物御曹司の不器用な恋情が激愛豹変する
梅雨が明け、夏らしい青空が頭上に広がるようになった七月の初旬。俺たち夫婦は一生忘れられない、大切な日を迎えた。
出産予定日からは二日ほど遅れた、平日の夜のこと。悠花が陣痛を感じ始め、産気づいたのだ。
幸い俺が家にいたので、痛みの感覚を一緒に測りつつ、十分間隔になったところで病院に連絡し、車で産院へと向かう。
まず通されたのは陣痛室という部屋だった。
痛みが引いている時には悠花の表情にも余裕があるものの、ひとたび痛み出すと、本当に苦しそうで見ているこちらもつらくなってくる。
しかし、やれることはやってやりたい。痛みのある時には、両親学級で学んだマッサージや声掛けを実践し、落ち着いている時にはストローでペットボトルの水分を取らせる。
できるだけ悠花に寄り添いながらそれを続けて、五時間ほど経った頃だろうか。
こんなに痛がっているのにまだ生まれてこないのかともどかしく思っているうちに、とうとうその時が来た。
診察をした医師が赤ちゃんが下まで降りてきているというので、分娩室へと移動することになる。