離縁を告げた夜、堅物御曹司の不器用な恋情が激愛豹変する
分娩台に横たわった悠花は脂汗を浮かべて苦しそうにしているものの、そばにいる俺の手をギュッと握りしめている。
「頑張れ、悠花。俺はここにいるから」
何時間も陣痛に耐えていたせいかすでに消耗している悠花は、声も出せないらしく、ただこくんと頷く。
俺に手伝えるのは、彼女に心細さを感じさせないことくらい。できるだけ声をかけ、励ましてやる。
悠花が必死でいきんでいる中、同じように必死になって呼吸や力を入れるタイミングを指導してくれる助産師、そして、外の世界へ出ようと頑張っている、俺たちの宝物。
それぞれの真剣な息遣いを肌で感じ、命の誕生に立ち会っているという実感が、俺の瞳を潤ませる。
頑張れ、悠花。頑張れ、俺たちの赤ちゃん……。
祈るような気持ちで出産に立ち会うこと、およそ二時間。
分娩室にまっさらな産声が響き渡り、出産をやり遂げた悠花の目から、ひと筋の涙が落ちる。
元気すぎるくらいに泣き続けている赤ん坊は、健診でもわかっていた通りかわいい男の子だった。
分娩台の上でぐったりとしつつも、大仕事を終えた悠花の表情は清々しい。