離縁を告げた夜、堅物御曹司の不器用な恋情が激愛豹変する

 これも結婚した時に、瀬戸山さんからいただいたものだ。とても高品質のコットンパジャマで、私の方が白、珀人さんが黒の色違い。

「……別にパジャマに罪はないよね」

 誰にともなく呟いて、バスルームへ移動する。

 とにかくこの鬱々とした気持ちを洗い流してしまいたかった。


 髪を乾かし終わってリビングダイニングに向かう途中、カチャカチャと派手に食器を重ねている音に水を流す音が交じって聞こえ、廊下にいた私はぴたりと足を止めた。

 珀人さん、もしかして食器洗いしてる……?

 そっとドアを開けて隙間から中を覗くと、ワイシャツを腕まくりした珀人さんが、予想通り対面式のキッチンでスポンジを握っていた。

 洗剤を使いすぎているのか、スポンジも食器もずいぶん泡立っている。そもそも、キッチンには食器洗い乾燥機がついているのになんで手洗いしているんだろう。

 ……ヒステリーを起こした妻へのご機嫌取りのつもり?

 悶々としつつも、『後で片づける』と言ってしまった手前先に寝てしまうわけにもいかず、今度は堂々とドアを開けて室内に入る。

 テーブルの上はすっかり綺麗になっており、珀人さんは先ほども見た通り、キッチンで泡だらけの皿と格闘していた。

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