離縁を告げた夜、堅物御曹司の不器用な恋情が激愛豹変する
「大さじ一杯は入れすぎですね……」
口ではそう言いつつ、つまり私のためにしてくれたことだろうかと、軽く驚いていた。
食器洗いを一度してもらったくらいで絆されはしないし、離婚を突きつけた原因の根本的な解決にもなっていない。
それでも、歩み寄る姿勢はゼロではないというのが意外だった。
……でも、なにもかも今さらだ。
「じゃあ、お言葉に甘えて先に休ませてもらってもいいですか?」
先ほどのような言い合いはしたくなかったので、寝室に逃げてしまうことにする。
珀人さんも引き留めはせず、再びシンクに向き直った。
「もちろんだ。家事のことは任せてくれ」
「よろしくお願いします」
ぺこりと頭を下げ、そそくさと彼のそばを離れた。
寝室に移動したはいいもののまだ十時にもなっておらず、寝るのにはだいぶ早い時間。
時間つぶしに棚から結婚式の写真が詰まったフォトブックを取り出す。プロが編集して一冊にまとめてくれた、豪華な装丁の一冊だ。
ベッドに腰を下ろし、じっくり眺めながらページをめくる。