離縁を告げた夜、堅物御曹司の不器用な恋情が激愛豹変する
ちょうどそう決めた時だった。寝室のドアがガチャっと開いて、珀人さんが入ってくる。
目が合った彼が、私の顔を見て怪訝そうに眉を顰める。
「悠花。……泣いていたのか?」
私はその問いかけを無視して、写真を棚に戻すために立ち上がる。そこへつかつかと彼が歩み寄ってきて、私の手からフォトブックを奪った。
彼はベッドにそれを放ると、私の肩を掴んで強引に正面を向かせる。
「悠花」
もどかしそうに名前を呼ばれたけれど、ふいっと目を逸らす。肩を掴む珀人さんの手に力がこもった。
「本気なのか? 離婚のこと」
「……はい」
「なにか不満があるなら直すから、どうしてほしいのか言ってくれ」
珀人さんの声はどこか焦っていた。
あれだけ私を放置しておいて、どうして今になって慌てるの?
「珀人さんにとって……私の存在って、なんですか?」
「大切な妻に決まってる」
「嘘です」
「どうしてそう決めつけるんだ」
「大切に扱われた覚えがないからです……っ」
そこで初めて、私はまっすぐに彼を睨みつけた。乾いていたはずの目に再びなみなみと涙が溜まってきて、珀人さんの困惑した表情が揺れる。
しかし反論はないらしく、彼は私から目を逸らして斜め下に視線を落とした。