離縁を告げた夜、堅物御曹司の不器用な恋情が激愛豹変する

「……理由を教えてくれ」
「まず、お前はその真木って社員が危険な男だいうのを悠花さんに伝えていない。隙を見せるなと言われても、相手は上司だ。コミュニケーションを一方的に制限されるのは彼女にとって理不尽だろ」

 瀬戸山の指摘に、ぐっと言葉に詰まる。

 そう言われてみれば、真木の名が出たことで、あの時の俺は余裕をなくしていた。

 あらかじめ過去の不倫の件を伝えていれば、悠花だって危機感を持ってくれたかもしれないのに……。

「それで彼女にちゃんと真木の前科を説明したうえで、夫として悠花さんの身が心配なんだとちゃんと言え。そうでなきゃ、一方的に仕事を辞めろと迫るただのモラハラ男だ」
「モ、モラハラ……」

 自分が言葉足らずだったのは理解したが、さすがにそのひと言にはショックを受ける。

 しかし、悠花も同じように思った可能性はある。離婚を決断するくらい、俺は彼女にひどいことを言ってしまったのだ。

「しかも、仕事を辞めてもらうための口実に妊娠や出産というワードを使ったのもよくなかっただろうな。男の俺たちはその大切な仕事を女性に託すしかないが、だからといって他人事のように安易に仕事を辞めればいいなんて、口が裂けても言えない。うちの会社でも、出産や育児で休むことと、その間のキャリアを天秤にかけて悩む女性は多いからな」

 瀬戸山が言葉を重ねるたびに、心にダメージが蓄積していく。

< 55 / 183 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop