離縁を告げた夜、堅物御曹司の不器用な恋情が激愛豹変する
悠花は一週間前も、奴と偶然ランチが一緒になったと言っていた。あの男のことだから、その偶然はつくられたものである可能性がある。
だとしたら、真木は悠花を狙っている……?
危機感を募らせるうち、車はカフェの前に到着する。運転手にすぐに戻ると告げると、俺は迷わず悠花のいた場所へと歩みを進めた。
たとえ周囲から公私混同だと呆れられようとも、妻を守るのは夫の役目だ。
「そうそう、こないだの話、やっぱり上から睨まれちゃってさ」
「えっ? ……修正した企画書の件ですか? やっぱり、課金しなくても報酬が手に入る仕様は好ましくないと?」
ふたりはどうやら仕事の話をしているようだ。しかし、俺は構わずテーブルに歩み寄り、「悠花」と声をかけた。
顔を上げた彼女が、動揺したように大きく目を見開く。
「珀人さん。どうしてここに……?」
「帰りがけに姿が見えたから。食事が済んでいるのなら、会社まで送る。そこで車を待たせているから」
テーブルの上を見る限り、悠花の皿はすでに空だ。真木の方はまだ食事の途中らしく、ハンバーグが半分ほど残っている。
悠花は決して早食いというわけではないから、彼女がひとりで食事していたところへ、真木が無理やり同席したのではないだろうか。
ちらりと彼に冷たい視線を送るも、真木は意に介さずにこりと微笑む。