離縁を告げた夜、堅物御曹司の不器用な恋情が激愛豹変する
ゆるめにまとめたシニヨンの髪にリボンのヘアクリップをつけ、全体を整えて完成。
もう一度だけ正面から上半身全体をチェックし、「よし」と呟いた。
服装は白のシャツワンピースにオフホワイトのニットベストを合わせ、全体的にふんわりと優しい印象を目指した。足元はベーシックな黒のショートブーツを履くつもりだ。
「お待たせしました……!」
廊下で待っていてくれた珀人さんにぺこりと頭を下げて、顔を上げる。思えば、彼の私服姿をじっくり見るのは久しぶりだ。
ベージュのトレンチコートに黒の丸首ニット、細身の黒いテーパードパンツを合わせたシンプルなコーディネートが大人っぽい。
私がまじまじと彼を見つめている間、彼もまた私の姿を上から下までじっくりと観察していて、なんだか恥ずかしくなってくる。
「あ、あの……変ですか?」
「まさか。やっぱりきみは、トルコキキョウだと思っていたところだ」
「え……?」
突然花の名前を呟く彼に、首を傾げる。
「前に花束を買ってきたことがあるだろう? あの時、店に並んでいた白のトルコキキョウの花からきみを連想して、だからそれを選んだ。もっとも、受け取ってもらえなかったから、覚えていないかもしれないが……」