離縁を告げた夜、堅物御曹司の不器用な恋情が激愛豹変する

 ……覚えていない、わけがない。珀人さんが初めて私のために買ってくれた花束だ。

 ただ、あの時は素直に喜べる心境ではなく、突き返すようにしてその場から逃げてしまった。

 後で彼が花瓶に飾ってくれているのに気づいて、捨てられていなかったんだと、ホッとした。

 ひらひらとしたトルコキキョウの白い花は本当に綺麗だったけど……私を連想する要素なんてあるだろうか。ふと自分の服を見下ろし、あ、と思う。

「私が白い服をよく着ているからですか? パジャマも白だし」
「単純な見た目だけの話じゃない。きみの上品な笑顔とか、清楚な雰囲気とか、あとはこの綺麗な肌とか。そういう全部が、あの花に似ていた」

 大きな手が頬に伸びてきて、すり、と頬を撫でた。真木さんに触れられた時とは違う、くすぐったい高揚感が私の胸をつつく。

 私とトルコキキョウの共通点を、そこまで詳細に考えていたというのも意外だ。

「お、お花屋さんのご友人がいると、気の利いたお世辞が上手になりますね……」

 照れ隠しにそう言って、熱くなった頬を隠すように俯く。珀人さんは少しがっかりしたようにため息をついた。

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