離縁を告げた夜、堅物御曹司の不器用な恋情が激愛豹変する
「どれでも好きなもの食べてね」
「ありがとうございます!」
礼儀正しい子たちばかりで、みんなきちんと目を合わせてお礼を言ってくれる。
鞠絵さんに対してモヤモヤしていた気持ちも少し落ち着いてきたが、そんな時に彼女と珀人さんの会話が耳に入ってくる。
「懐かしいわね。財前くんとまたこの部屋で顔を合わせることになるなんて思わなかった。社長室で毎日会っているのに、なんだか新鮮だわ」
社長室で毎日……? 鞠絵さんって、財前ホールディングスの社員だったの?
珀人さんがなにも話してくれないから知らなかった……。
「俺も似たようなことを思っていたところだ。とくに、妻とこの場所を訪れることができたのは感慨深い。……そういえば、きみたちも顔見知りか」
珀人さんはそう言って、「悠花」と私を呼んだ。
このまま鞠絵さんと親密そうな会話を続けるのだろうかと思っていたので、急に呼ばれて少し動揺してしまう。
「は、はい」
「四季のことは知っているな。今、会社で俺の秘書をしてくれている」
秘書――。だから〝毎日会っている〟ということか。
深い意味があるわけではなくてホッとする。