離縁を告げた夜、堅物御曹司の不器用な恋情が激愛豹変する
グラスを傾けて少量のグリーンアラスカを口に含むと、スパイシーなハーブの風味とキレのある辛口の味わいが、舌の上に広がった。
とてもじゃないけれど、初心者が飲めるお酒ではない。しかし一度目よりは体が慣れているせいか、強がりではなくきちんと美味しいと感じる。
「料理も食べて。ほら、きみのノルマだ」
私がお酒を味わっているうちに、珀人さんが料理を取り分けてくれていた。
自分の皿には少ししかのせていないのに、私の方だけやけに山盛りだ。
「私のぶん、多くないですか?」
「しっかり食べた方が酔いが回らないからな」
「心配しすぎですよ」
「きみの夫なんだから当然だ」
珀人さんはその後もずっとそんな調子で、私が飲みすぎないよう目を光らせていた。
今日の彼は、これまでの結婚生活で私に無関心だったのが嘘のように、あれこれ世話を焼いてくれる。
それはまるで本当に愛されているかのようで、彼の監視の中でゆっくりとお酒と料理を楽しんでいるうちに、私はふわふわと心地よい酔いに包まれていった。
部屋に移動したのは午後八時頃だった。珀人さんのエスコートで案内されたのは、豪華なインテリアに囲まれたスイートルーム。
リビングの向こうに、バーから見たのとは別の方角の夜景が見える。
それに惹かれて自然と大きな窓の方へ近づこうとしたら、珀人さんにぐっと手首を引かれて、背中から抱きしめられた。はずみで持っていたバッグが床に落ちる。
心臓が大きく脈打って、じわじわと全身に熱が広がっていく。