離縁を告げた夜、堅物御曹司の不器用な恋情が激愛豹変する
「電話……」
「きみのバッグの中から聞こえるな。……待ってて。持ってくる」
軽く体を起こした私の髪を撫で、珀人さんがソファから下りる。
未だにバクバクと脈打つ胸に手を当てて、なんとか気持ちを落ち着ける。
珀人さんはすぐにバッグを持ってきてくれたけれど、ちょうどそこで着信音が鳴りやむ。
「切れてしまったようだな」
「ですね。一応確認します」
私がバッグの中を探っていると、珀人さんは私のプライバシーに配慮してか、ダイニングスペースに移動する。
そこに置かれた冷蔵庫から、ミネラルウォーターのボトルを取り出して飲んでいた。
視線を手元に戻し、探し当てたスマホに触れる。パッと画面に表示された不在着信の発信者名は【真木課長】だった。
Zアドバンスは土日休みなので、基本的には連絡も避けるのがルール。
真木さんだってもちろんそれは知っているはずだけれど、それでも連絡してきたということは、緊急の内容……?
思案しているうちに、新しい通知がポンと画面に追加される。
真木さんや葵ちゃんをはじめ、アプリ開発課で同じ企画を担当する数名が参加しているグループチャットに、新しいメッセージが追加された知らせだ。
やっぱり、なにかあったのだろうか。すぐにアプリを開き、会話内容を確認する。予想通り送信者は真木さんだった。