離縁を告げた夜、堅物御曹司の不器用な恋情が激愛豹変する

「もしもし、財前です」
『ごめんね休み中に。チャット見たかな？』
「はい。今から行きますとお返事しようとしていたところで」
『よかった。西口さんも来れるって言うから、悪いけどこれから会社に集合で。夜だからくれぐれも道中気を付けてね』
「ありがとうございます。それでは後ほど」

　通話を終えて耳からスマホを離すと、いつの間にか珀人さんがそばに来ていたのでドキッとする。

「上司からか？」

　はい、と答えればいいのに一瞬言葉に詰まってしまう。彼の話をすると、珀人さんはいつも途端に不機嫌になるから……。

「真木か」

　案の定、彼からの電話だったと察した途端、珀人さんはため息をついた。

　どうしてそんなに彼を目の敵にするのか、私には今でもわからない。

「ですので、これから会社に行きます。せっかく素敵な部屋を取ってくださっていたのにすみません」

　彼の目を見ずに言って、その横をすり抜けようとした瞬間、ぐっと肩を掴まれ、引き留められる。

「待て。呼ばれているのは悠花だけか？」
「いえ、チームのグループチャットで呼びかけていましたから、他の社員も来るはずです。すでに女性の後輩がひとり来るのは決まっていると電話で真木さんも話していましたし」
「本当に、今夜わざわざ集まらないといけないような件なのか？」