離縁を告げた夜、堅物御曹司の不器用な恋情が激愛豹変する
真木さんとふたりきりになるわけではないと知ってもなお、珀人さんは納得できないようだ。
できるだけ早く会社に向かってチームのみんなと話し合いたいのに、言いがかりをつけられているような気になって、胸にかすかな苛立ちが湧く。
「詳しいことは行ってみないとわかりませんが、真木さんは早い方がいいと判断したのだと思います。アプリの制作は各工程が締め切りとの戦いですから、私にも彼の気持ちはわかります。時間があるうちに、やるべきことをやろうとしているだけです」
「社員が休日の夜に出勤しなければ守れない締め切りなら、そっちの方が間違っている。Zアドバンス上層部の意向と言っていたが、俺が口添えすれば考え直してもらえるだろう。すぐに担当者を調べて連絡する」
珀人さんがポケットからスマホを取り出すところを見て、私は我慢ができず彼に詰め寄った。
彼がスマホを持つ手を握って、強引に下ろさせる。
「やめてください……! どうして私の仕事の邪魔をするんですか?」
肩で息をしながら目を吊り上げる私に、珀人さんは驚いて目を見張った。
……やっぱり、彼は私のことを大事に思ってなんかない。仕事を辞めるよう迫ってきたあの時と同じで、妻の仕事は自分の意思でどうにでもなると思っているのだ。
私はキュッと唇を噛み、彼に鋭い眼差しを向ける。