天才魔導師の悪妻~私の夫を虐げておいて戻ってこいとは呆れましてよ?~
(いや! 早! ……まぁ、シオン様が穏やかに眠れるならそれが一番)
私は穏やかに瞼を閉じるシオン様を見て少し怖くなる。あまりにも整いすぎた顔は、死を連想させた。
(原作での自死シーンはトラウマものだったわ……)
私は思い出しブルリと震えた。そっとベッドからおり、シオン様側のベッドサイドに回る。そして、ソーッと口元に手をかざしてみる。微かに寝息を感じてホッとする。
「……うん。ちゃんと息してる。……シオン様。今日も生きていてくれてありがとうございます」
私は私の神であるシオン様に向かって両手を合わせ拝む。
すっかり寝ている様子のシオン様をしばし見つめ、その寝姿を網膜に刻みつけた。
漂ってくる仄かな香りに眩暈がする。
「私が用意したボディーソープの香り……。どうして同じものを使っているのに、シオン様だけいい香りなのかしら?」
素朴な疑問を口にしつつ、自分の肩に鼻をつけ匂いを嗅ぐ。
「私、変態じみているわね……」
そう思いつつキョトキョトとあたりを見回す。当然だが誰もいない。