天才魔導師の悪妻~私の夫を虐げておいて戻ってこいとは呆れましてよ?~

「ちょっとだけ……。ちょっとだけよ……」

 私はいもしない誰かに言い訳し、大きく深呼吸をした。

(もう二度とこんなことしないので今日だけ許してください!)

 シオン様の香りを肺いっぱいに詰め込むと、私は寝室を出た。

(やっぱり、同室で寝るなんて無理。ソファーで寝て、シオン様より早く起きれば一緒に寝たと思われるでしょ)

 ソーッと寝室のドアを閉める。

(おやすみなさい。シオン様。良い夢を――)

 私は祈る。

 シオン様がいついかなるときも、幸せであるように。




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