天才魔導師の悪妻~私の夫を虐げておいて戻ってこいとは呆れましてよ?~
「そんなことありません!! シオン様はローレンス殿下が大切で、自分が汚れ仕事を引き受けていただけじゃないですか! ローレンス殿下に王道を歩ませるために!! それを私は卑怯だなんて思わない! シオン様がシオン様を否定しても! 私は! 私だけはあなたを誇りに思います!!」
肩を怒らせ、一気にまくし立てるとシオン様はクシャリと微笑んだ。
「本当に……ルピナには敵わないな……」
そう言ってクツクツと笑い出す。笑いすぎて目尻に涙がたまっている。
「シオン様?」
小首をかしげる私を見て、目尻の涙を拭った。
「国王陛下に面会を求めてほしい。まずはそれで、私が魔塔から解放された証明となるだろう」
「……シオン様……」
「そして、私の部屋をセレスタイト公爵家に用意してはくれないか。できれば、ルピナの部屋の近くに。そうすれば、私たちの結婚生活が成立していると言えるだろう」
シオン様は遠慮がちに私を見た。
はにかみながら窺う様子が、少し幼げで私はズキュンと心臓を打ち抜かられる。