天才魔導師の悪妻~私の夫を虐げておいて戻ってこいとは呆れましてよ?~
すると彼は、不機嫌そうに眉間に皺を寄せていた。
「破婚など認めない。ようは、凶事の原因を突き止めればいいのだろう?」
「っ! でも! それは!」
私は慌てた。原因はエリカなのだ。
(それを知ればシオン様は、きっとすごく傷つく)
シオン様は悲しげな目で私を見た。
「私は長いことローレンス殿下の手伝いをしてきたからわかる。これは彼のやり口のひとつだ。本来の原因から目を背けさせるため、違う要因に目を向けさせる。そして、自分の望む形に納めさせるのだ」
シオン様は肩をすくめ、小さく呟いた。
「……それを必要悪だと信じて手伝ってきていた私も同罪だ。私は卑怯者なんだ」
私は思わず立ち上がる。