天才魔導師の悪妻~私の夫を虐げておいて戻ってこいとは呆れましてよ?~
ぼんやりとあたりを見回すシオン様から、マントを引き剥がし、フカフカのソファーに座らせた。
シオン様はパチパチと瞬きし、私をじっと見た。
真っ黒い宇宙のような瞳に、私が映っている。
(ひぃぃぃぃっ! なんて美しいの……)
私は正気を保つのが難しいほどなのだが、そこをなんとか踏ん張る。
シオン様の未来を守る正念場なのだ。
(私はどんなに憎まれてもいい、嫌われてもいい。シオン様さえ無事ならいいのよ!!)
グッとおへそに力を込めて、精一杯悪女面をしてみる。
(私は女優……私は女優……)
自分自身に言い聞かせ、シオン様の前に偉そうな顔でふんぞり返る。
「シオン様。あなたは私と結婚することになったの。覚悟することね」
「……どういうことだ。勝手なことは困る」
「あら? あなたには拒否権がないのですわ」
「私は宮廷魔導師とはいえど、一番身分が低い。しかも不義の印である黒髪の男だ。そんな者と結婚するなど、セレスタイト公爵家になんの利がある?」
困惑顔のシオン様もやっぱり素敵だ。