天才魔導師の悪妻~私の夫を虐げておいて戻ってこいとは呆れましてよ?~


 ぼんやりとあたりを見回すシオン様から、マントを引き剥がし、フカフカのソファーに座らせた。

 シオン様はパチパチと瞬きし、私をじっと見た。

 真っ黒い宇宙のような瞳に、私が映っている。

(ひぃぃぃぃっ! なんて美しいの……)

 私は正気を保つのが難しいほどなのだが、そこをなんとか踏ん張る。

 シオン様の未来を守る正念場なのだ。

(私はどんなに憎まれてもいい、嫌われてもいい。シオン様さえ無事ならいいのよ!!)

 グッとおへそに力を込めて、精一杯悪女面をしてみる。

(私は女優……私は女優……)

 自分自身に言い聞かせ、シオン様の前に偉そうな顔でふんぞり返る。

「シオン様。あなたは私と結婚することになったの。覚悟することね」

「……どういうことだ。勝手なことは困る」

「あら? あなたには拒否権がないのですわ」

「私は宮廷魔導師とはいえど、一番身分が低い。しかも不義の印である黒髪の男だ。そんな者と結婚するなど、セレスタイト公爵家になんの利がある?」

 困惑顔のシオン様もやっぱり素敵だ。
< 27 / 305 >

この作品をシェア

pagetop