天才魔導師の悪妻~私の夫を虐げておいて戻ってこいとは呆れましてよ?~
夕暮れの町角は私の仕掛けたイベントで盛り上がっており、どこもかしこもラブラブなアベック(死語)でいっぱいである。
なんども夢見たシオン様のバレンタインデートシーン。妄想の隣にいたのは当然ヒロインのエリカだったが、今は私がいる。
(罪悪感がないわけではないけど、それより夜の町を歩くシオン様の新規絵を拝見できた興奮で吹っ飛ぶわ!)
ニマニマしながら私はシオン様の一歩後ろをついていく。貞淑な妻ぶっているわけではない。この位置だったらシオン様をネットリと見つめていても気がつかれないからである。
「それにしても、私が時計台の水仙を飾る日がくるとは思わなかったな」
シオン様が水仙を売る露天商の前で足を止め振り返った。
「当然です! 今までがおかしかったのです!!」
私は鼻息荒く力説する。
春祭り前夜に時計台の窓際に水仙を飾る役割は、その年で一番功績が高かった魔導師なのだ。魔導師なら一度は憧れる名誉ある仕事だった。
時計台に飾る水仙は、祭りのために集まった花売りの露天商から少しずつ買い集める決まりになっていた。
露天を巡り、数本ずつ水仙を買い求める。水仙とはいっても、前世の水仙とは少し違う。白と黄色ばかりではなく、青や紫などの花色もあるのだ。
シオン様と一緒に時計台に飾る水仙を買えると思うと誇らしい気持ちになる。