天才魔導師の悪妻~私の夫を虐げておいて戻ってこいとは呆れましてよ?~
私はおもわずシオン様を見上げる。
シオン様は目を合わさないでぶっきらぼうにつぶやいた。
「危ないからな」
ほんのりと色づいた首筋がスラリと黒髪の中で際立ち、あまりにもセクシーだ。
(いけない、いけない! おもわず舌なめずりしそうになってしまった……)
フヒフヒと鼻息が荒くなるのを隠すため、俯いて口元を押さえる。こんな場所で鼻血を出してはいけない。
(でも、こんな近距離、推しに対して不敬だわ! さっきも公認セクハラしたばかりだというのに図に乗ってはダメ!!)
私は急ぎマントから出ようとする。
「もう、大丈夫なので!」
そう言うと、シオン様は捨てられた子犬のように悲しそうな瞳をして小首をかしげた。
「気持ち悪かったか?」
そんなふうに聞かれたら私にはなにも言えない。
黒髪で人々から忌諱されてきた彼は、自己肯定感が低いのだ。