天才魔導師の悪妻~私の夫を虐げておいて戻ってこいとは呆れましてよ?~

 暗い階段を無言で上る私たち。明かりはシオン様が魔法でともす指先の光だけだ。
 幻想的に揺らめく光は、ほんのりと紫に輝いている。

(うーん……セクシー……)

 紫色に照らされるシオン様の横顔に見蕩れながら、私は階段を上っていく。
 大きな振り子の揺れる音。歯車が軋んでいる。チクタクと進む秒針が、私の心音の速さを際立たせる。
 時計を通り過ぎ最上階ヘ到着する。
 正面の壁の少し高い位置、木製の扉がついた窓が見えた。
 両脇には水仙を飾るためのしつらえがしてある。
 私たちは水仙を飾り付け、日付が変わる時を待つ。
 カチ・カチ・カチ……と進む秒針が冬の終わりを告げるカウントダウンを始めた。
 あと十秒、というところでシオン様が私を抱きあげた。

「!?」

 驚いて目を剥きシオン様を見上げる。
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