天才魔導師の悪妻~私の夫を虐げておいて戻ってこいとは呆れましてよ?~
「たまにはアレンジしてみましょうか。こんなに綺麗なんですもの」
「好きにすればいい」
ルピナに提案されシオンは答えた。
彼は本来、人に髪を触らせることはない。触れられるのが嫌いなわけではなく、相手に対して罪悪感を感じるからだ。
幼い頃から家族ですらも彼の髪に触れなかった。
誤って触れたとき、皆、嫌悪の視線を彼に向けた。
その度に誤り続けてきた過去が、自身の髪を忌むべきものだと認識させた。自分自身でも髪を大切にすることができない。
伸びた髪は自分で揃える。男爵家子息でありながら、散髪も自らおこなった。
ましてやアレンジをして飾り立てようなど考えもしたことがなかった。
(この心地よい時間が続くならなんでもいい)
シオンはルピナに髪を預けて目を瞑る。
グフフと言う不気味な含み笑いに、ルピナの感嘆が交じる。ダンガンのような早口はもはや意味不明で深く考える気にもならない。