天才魔導師の悪妻~私の夫を虐げておいて戻ってこいとは呆れましてよ?~

「ええ。この子の元気がないのです。あなたを攫ってきた理由です。この子の面倒をシオン様に見ていただきたくて」

 ドラゴンはこの国で伝説といわれる魔獣である。近年は見たという噂すら聞かなくなっていた。すでに絶滅したのではないかといわれている生物で、もちろん謎に満ちたその生態のため、生育方法は確立されていない。

 このドラゴンは、漫画の未来でエリカが発見し、『黒色ドラゴンは悪の化身』と退治する。悪の化身であるドラゴンを退治したことで、エリカは名声を得るのだ。

 黒いというだけで殺されるのは理解不能な私は、エリカに先回りして保護したのだ。

(まぁ、シオン様の興味を得るという下心ももちろんあるけれど……)

 その下心がドラゴンにはお見通しなのか、私に中々懐いてくれず、看護に苦心しているである。私を見ると威嚇するので、妖精たちにお世話をお願いしているのだ。

「どうですか? 黒くて美しいドラゴンでしょう?」

「……黒くて美しい?」

「ええ、とても」

「あなたは黒を恐れないのだな」

 シオン様がしみじみと呟いた。

 私は小首をかしげる。
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