天才魔導師の悪妻~私の夫を虐げておいて戻ってこいとは呆れましてよ?~
「そもそも我々は人間が好きではない。そのうえ、このドラゴンの親は白髪の勇者に殺されたそうだ。三百年前の話だが、それ以降発育不全なのだ」
ケンタウレアが答える。
(三百年前のドラゴン退治は、この国の英雄譚になっているけれど、本当に悲しい話よ……)
私は思わずため息を零す。
シオン様も気の毒そうに眉根を寄せる。魔導師として知識が豊富な彼は、ドラゴンが無意味に人間を攻撃した事実がないことはわかっているのだ。
私はそんなシオン様になら、ドラゴンを任せられると思っていた。
「だから、シオン様をお呼びしたのですわ。この国で最高の魔術知識を持つお方ですから」
「……私が最高の知識?」
「ええ。ほかに適任者はおりませんわ。結婚はいわば隠れ蓑。白い結婚でかまいませんの。でも、あなたの能力をドラゴンのために使ってくださらない? そうすればあなたの望むもの、すべて差し上げますわ」
私が言い切ると、気まずそうに目を逸らし、ドラゴンを見た。
なぜかシオン様の首筋が赤い。