天才魔導師の悪妻~私の夫を虐げておいて戻ってこいとは呆れましてよ?~
「ま、ま、まぁ? こ、こ、この私から逃げられるとは思いませんけれどぉ!」
声が裏返ったことを誤魔化すように、髪を払って「ハン!」と鼻を鳴らしてみせる。耳まで熱くなっていることは、気がつかない振りをする。
すると、シオン様は口元を押さえ笑いをこらえた。肩が震え、目尻に涙がたまっている。
(っ! ちょ! 笑いがこらえられてないんですけど? それもまたカワイイんですけど??)
私の推しはどんな表情も抜群に最高の高過ぎてヤバいのである。
「しかし、私は王都からあまり出たことがない。一緒に行ってはくれないか?」
小首をかしげて窺うシオン様に抗える者などいるだろうか。いや、いない。
「もちろんですとも! 素敵な旅をお約束します!」
即答すると、シオン様は嬉しそうに微笑む。
「そうか。楽しみにしている」
私はなにも考えられず、反射でコクコクと頷いた。