天才魔導師の悪妻~私の夫を虐げておいて戻ってこいとは呆れましてよ?~

 シオン様に背を向けるようにしてベッドのフチギリギリに腰掛けると、ミシリとスプリングがしなって心臓が飛び跳ねる。

(う……。吐きそう……推しと同室で寝るだけで恐れ多いのに、同じベッド? いや、ダメでしょ? ファンとしてダメでしょ? バチが当たらない??)

 視点はグルグルとして定まらず、体がガチゴチに緊張している。

「……ルピナ」

 甘い声で名を呼ばれ、私はシオン様を振り返った。パニックで目尻に涙がにじむ。そうして見るシオン様はプリズム効果で、さらに光り輝いて見える。

(あああ……神様! この美しさは神の領域です!!)

 思わず拝みそうになる。

 しかし、シオン様は眉根を寄せた。

「なにもしない。ただ寝るだけだ。しかし、泣くほど嫌か?」

 そう問われ、ハッとした。
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