冷徹皇子の夜伽番 ──童貞を奪うのは私の役目?──
そして私は、マルグリットと共にアルベール皇子の私室の前へとやって来た。

磨き上げられた大扉の前に立つと、心臓の音がやけに大きく響く。

「いいこと、エリシア。」

マルグリットが低い声で言った。

「もしアルベール皇子が戸惑っている時には、あなたがそっとリードするように。だが、もし殿下が積極的であれば……その時は逆らわず、身を委ねるのよ。」

「……はい。」

震える声で返事をした途端、膝が少し笑った。

マルグリットはそれ以上何も言わず、背を向ける。

「後はあなた次第です。」

そう言い残し、廊下の向こうへと歩み去っていった。

重苦しい沈黙が残る。

私はただ一人、扉の前に立ち尽くした。

逃げ出したいのに足が動かない。けれど、扉の向こうにいる殿下を想うと、不思議と胸の奥が熱を帯びてくる。

――殿下が私を選んでくださった。

その事実だけが、今の私を支えていた。

深く息を吸い込み、震える手を扉にかける。

これから先の運命を変える夜が、いま始まろうとしていた。
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