冷徹皇子の夜伽番 ──童貞を奪うのは私の役目?──
そして湯浴みを終えた私は、用意された薄いナイトウェアに袖を通した。

柔らかな布地が肌にまとわりつくたびに、心臓が高鳴る。

鏡の前に座り、侍女たちに髪をとかしてもらう。

銀糸のように光を受けて流れる髪を眺めていると、不思議なことに少しだけ気持ちが落ち着いてきた。

「ようやくアルベール皇子も、大人になるのですね。」

「これで王国も安泰ですわ。」

侍女たちはそんな囁きを交わしながら、期待に胸を弾ませているようだった。

だが、私は胸が苦しいほどの不安に押し潰されそうだった。

――だって、私だって処女なのだ。

夜伽の仕方など、詳しく知るはずもない。

どんなふうに殿下を喜ばせればいいのかも分からない。

“上手くリードして差し上げる”なんて、到底できそうにないのに……。

唇を噛みしめ、視線を落としたその時だった。

扉が静かに開き、マルグリットが姿を現す。

「……準備は整ったようね。」

その声に、私は思わず背筋を伸ばした。

いよいよ、逃げられない時が来たのだ。
< 9 / 30 >

この作品をシェア

pagetop