冷徹皇子の夜伽番 ──童貞を奪うのは私の役目?──
そして私は、震える指でドアをノックした。

「アルベール皇子、エリシアです……」

静寂の後、重厚な扉がゆっくりと開く。

そこに立っていた殿下は、いつもの軍服や礼装ではなく、肩をゆるめたラフな装いをしていた。

その姿に、思わず息をのむ。

「……エリシア。」

名を呼ぶ声は驚くほど優しい。

次の瞬間、伸ばされた大きな手が私の腕に触れる。

「入って。」

低い声に導かれ、私は恐る恐る部屋の中へと足を踏み入れた。

閉ざされた扉の音とともに、背後から温かな気配が近づく。

ふいに抱き寄せられ、強い腕に包まれた。

「今日は、来てくれてありがとう。」

耳元で囁かれた言葉に、心臓が大きく跳ねる。

「い、いいえ……」

かろうじてそう返した声は震えていた。

冷徹だと噂される人の、こんなにも柔らかな抱擁。

胸の奥で何かがほどけていく。

「緊張しているだろう?」と殿下は微笑む。

「ハーブティーがある。まずはそれを飲もうか。」

優しい誘いに、思わず頷いていた。

夜伽の命令で来たはずなのに……心は、恋する娘のように震えていた。
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