冷徹皇子の夜伽番 ──童貞を奪うのは私の役目?──
「ええっと、あの……」

言葉が喉で絡まり、体が小刻みに震える。

そんな私を、アルベール皇子はさらに強く抱き寄せた。

「大丈夫だ。」と囁く声は低く、けれど優しい。

私は勇気を振り絞り、唇を動かした。

「アルベール皇子が……私を求めてくださっていると、聞きましたから……」

その言葉を受け、殿下ははぁ、と短く息を吐く。

眉間に皺を寄せ、重い沈黙が流れた。

「……夜伽をしろと言われて、それで来ただけか?」

突き放すような声音に胸が詰まる。

「……はい。」

絞り出すように答えると、彼の腕がゆるみ、私はそっと解き放たれた。

アルベール皇子はすっと立ち上がり、広い背を向ける。

そして壁際へ歩み寄ると、片手を突いて深く俯いた。

沈黙の中、衣擦れの音だけが響く。

その姿は苦悩に満ち、冷徹な仮面の裏に隠された本当の感情を垣間見せているようだった。

胸の奥が熱く痛む。

“私では駄目だったのだろうか”という不安が、喉元まで込み上げてくる。

けれど、背を向けたままの殿下の肩は、小さく震えていた。
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