冷徹皇子の夜伽番 ──童貞を奪うのは私の役目?──
マルグリットは固い表情のまま、冷たい声音で言い放った。

「お二人が正式に結婚しているのであれば、それは初夜と呼べましょう。ですが、これはただの夜伽の一つにすぎません。」

その瞬間、空気がひやりと冷たくなった気がした。

思わず息を詰める私の横で、アルベールは微かに目を伏せると、無表情のまま短く答えた。

「……そうだったな。」

甘い一夜を切り裂く、鋭い言葉。

私は胸をぎゅっと締めつけられる思いで俯いた。

“ただの夜伽”……。

けれど、本当にそうだろうか?

あの夜、彼の温もりに包まれ、何度も名前を呼び合い、愛を囁いてくれた。

「君だけだ」「おまえを愛している」と言ってくれたその声は、偽りなどではなかったはずだ。

――あの甘美な夜を味わった人なら。

決して“ただの夜伽”などと言えるはずがない。

震える指先を膝の上で握りしめ、私は胸の奥で叫んでいた。

“殿下、本当にあれはただの行為だったのですか……?”

けれど隣に座るアルベールの横顔は冷徹そのもので、心の内を読み取ることはできなかった。
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