冷徹皇子の夜伽番 ──童貞を奪うのは私の役目?──
そして私は、ナイトウェアを脱ぎ捨て、いつもの地味なメイド服に袖を通した。

鏡に映る自分は、何事もなかったかのように冷静な顔をしている。

けれど胸の奥は、まだ昨夜の余韻とマルグリットの冷たい言葉に揺れていた。

廊下に出ると、仲間の一人がにこやかに歩み寄ってきた。

「どうだった? アルベール皇子は?」

「どうって……?」

曖昧に返す私に、彼女は目を輝かせて続ける。

「昨日、皇子に抱かれたんでしょ。初めての夜伽番なんだから!」

その嬉しそうな声に、胸がちくりと痛んだ。

今はそっとしておいてほしい……。

「ねえ、皇子は優しかった? それとも激しかった?」

興味津々に迫る仲間の言葉に、私は視線を逸らす。

「……優しかったわよ。」

小さな声でそう答えると、彼女はくすりと笑った。

「そうか。優しい方か。」

その何気ない一言に、胸の奥が再びざわめいた。

――優しかった。確かに。

けれどあの優しさが、ただの夜伽の一環だとしたら……。

仲間が笑顔で去っていくのを見送ると、私は深く息を吐いた。

どうしても割り切れない思いだけが、胸の中で膨らんでいた。
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