冷徹皇子の夜伽番 ──童貞を奪うのは私の役目?──
「いいなぁ。私も夜伽番に立候補しようかな。」

不意にミレーヌが軽い口調で言った。

「えっ?」

思わず顔を向けると、彼女は悪戯っぽく笑っていた。

「だって、運よく皇子の子供を産めば、一生安泰だもんね。」

胸の奥がズキリと痛んだ。

そんな理由だけで……?

「そんな理由だけで、子供を産むの?」

絞り出すように問い返した時、脳裏に昨夜の言葉が蘇る。

――“愛なき行為は空しいだけだ。”

アルベール皇子が吐露した寂しげな声が、耳の奥で蘇り、胸を締めつけた。

ミレーヌは一瞬驚いた顔を見せたが、すぐに肩を竦めて笑った。

「もちろん、それだけじゃないわ。アルベール皇子のことは尊敬しているし……好きだからよ。」

“好きだから。”

そう言われてなお、私の胸は晴れなかった。

尊敬や好意と、私が抱いている想いとはまるで質が違う気がした。

ただ打算のために抱かれるのと、心を重ね合って結ばれるのとでは……まったく別物。

それを一番よく知っているのは、きっと殿下自身。

私は胸の奥で、誰にも言えぬ想いを強く抱きしめていた。
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